院長のコラム

平成31年3月27日をもちまして
大阪市立総合医療センター小児耳鼻咽喉科を辞職することとなりました

大阪市立総合医療センターにて人工内耳手術を受けた方々ならびにご家族の皆様へ平成31年3月吉日

前略、
皆様方におかれましてはご健勝のことと存じ上げます。さて昨年平成30年3月に当院病院長の方針により当小児耳鼻咽喉科医師の再編(元医師らの放出ならびに大阪大学耳鼻咽喉科への帰属)が行われ、そのため私も本年平成31年3月末をもちまして、当院小児耳鼻咽喉科の応援医師の契約を終了致しました。思い起こせば平成13年1月に大阪市立大学耳鼻咽喉科より当科へ赴任致しまして、当院における人工内耳医療を立ち上げ、現在まで18年間全例の人工内耳手術に、執刀医としてあるいは指導医として携わってまいりました。幸いにして多くの方々が、人工内耳の福音に浴され、その素晴らしさに改めて感心しているところであります。もちろん難聴という障害を完全に無くすことはできませんが、その障害が少しでも軽減され、皆様の将来に福音がもたらされることを切に祈らせて頂く次第であります。今後は岡崎鈴代医師により皆さまの経過を引き続いて診て頂けますようお願い致しております。とても信頼できる先生ですので、是非ご安心頂ければと存じます。
残念ながら最後のご挨拶が出来なかった方々もおられますが、簡素ではございますが、この書面にてご挨拶とさせて頂きます。皆様方のご多幸を心よりお祈り申し上げます。
草々
大阪市立総合医療センター 小児耳鼻咽喉科
くぼ耳鼻咽喉科クリニック
久保武志

(追伸) 回顧録
私の人工内耳医療の取り組みは、28年ほど年前に遡ります。まだ人工内耳が保険診療と認められる以前、元京都大学耳鼻咽喉科教授、伊藤壽一先生(日本の人工内耳の先駆者)に人工内耳を教わり、その後オーストラリア、メルボルン大学附属病院での手術研修、人工内耳の開発者、メルボルン大学クラーク博士による講義も直に聞かせて頂き、大阪市立大学耳鼻咽喉科での人工内耳の立ち上げ、大阪市立総合医療センターでの人工内耳の立ち上げ、そして現在に至るまで、長きにわたり、自身のライフワークとして人工内耳医療に携わってまいりました。当初に比べ、人工内耳システムも飛躍的に進化をしており、ただ感心するばかりです。今ではとても感慨深く感じております。やり終えた感もあります。次代の先生方の成長を心よりうれしく思っております。患者様から教えて頂くこともたくさんありました。おそらく開発者クラーク博士も夢がこんなにも、想像以上に素晴らしい現実のものになるとは思ってもいなかったのではないでしょうか。私は今後も別の場所より、聴覚障害を持つ方々が、人工内耳により、より明るい希望を持てることを心より祈らせて頂く次第です。